スクワットやヒップスラストで仙腸関節が痛くなる。プロのトレーナーに見てもらっても、むしろ悪化する——そんな経験はありませんか? フォームを直しても痛みが消えないとき、見落とされがちな「腹圧」こそが鍵を握っています。
なぜフォームが正しくても痛くなるのか
パーソナルトレーナーの資格を持つ専門家に見てもらっても腰が痛くなる——この状況は「動作の形」は正しくても、「力を伝える土台」が整っていない場合に起こります。その土台こそが腹腔内圧(腹圧)です。
腹圧とは、呼吸と腹横筋・骨盤底筋などの深層筋が協調して腹腔を内側から圧迫し、脊柱を安定させる機能です。この圧力が不十分だと、スクワットやヒップスラストのような高負荷の種目では、腰椎や仙腸関節に代わりに力が集中してしまいます。
「腰椎の安定性は、腹横筋をはじめとするコア筋群が先行して活動することで保たれる。この先行活動が欠如すると、動作中の脊椎への剪断力が増大する」
パーソナルトレーナーと行う場合に「より痛い」のは、トレーナーの声かけに意識が向き、無意識に行っていた腹圧のタイミングが崩れるためと考えられます。重量が軽くても、コアが抜ければ腰への負担は増します。
今すぐ取れる行動:腹圧の習得を最優先に
解決策はシンプルです。次回のパーソナルセッションで、トレーナーに「腹圧のかけ方から教えてほしい」と伝えましょう。これはレベルダウンではなく、パフォーマンスと安全性を同時に高める最短ルートです。
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痛みが引くまで完全休養——現在の湿布・鎮痛剤での休養は正解です。炎症が残った状態でトレーニングを再開しないこと。
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トレーナーへの相談——「仙腸関節が痛む」「腹圧から教えてほしい」と具体的に伝える。誠実なトレーナーであれば必ず対応してくれます。
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ドローイン・ブレーシングの練習——仰向けで腹横筋を意識するドローインから始め、次にプランクで静的保持を練習する。
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段階的な負荷の再開——腹圧を安定してかけられるようになってから、スクワットやヒップスラストへ戻す。
筋トレをやめる必要はありません
「自分でやっても、パーソナルでやっても痛いなら筋トレをやめるべきか」という不安は理解できます。しかし原因が腹圧の未習得であれば、種目そのものが問題なのではありません。腹圧をマスターすれば、スクワットもヒップスラストも、より安全かつ効果的に行えるようになります。
腹圧をマスターすると何が変わるか
腹圧は「腰を守る機能」であると同時に、「力を正しく出力するための基盤」でもあります。腹圧が安定すると、ヒップスラストでは殿筋に、スクワットでは大腿四頭筋・ハムストリングスに意識が集中しやすくなります。腰を固められないと、力が伝わり切る前に逃げてしまうのです。
今この痛みに気づけたことは、長期的なトレーニングライフにとって大きなチャンスです。ほとんどのトレーニーが腹圧を意識せずに続け、慢性的な腰痛に悩む中で、今の段階で根本から習得できれば、今後の伸びしろは格段に広がります。
参考文献・引用
“Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain.”
Spine, 21(22), 2640–2650.
腰痛患者では腹横筋の先行活動が遅延しており、これが脊椎安定性の低下につながることを示した先駆的研究。
“Core training: Evidence translating to better performance and injury prevention.”
Strength & Conditioning Journal, 32(3), 33–46.
コアスティフネスの重要性を解説し、適切な腹圧(ブレーシング)が腰椎への剪断力を軽減することを示した論文。
「腰痛の予防とリハビリテーション——コア筋群の役割」
腹横筋・多裂筋を中心としたインナーユニットの強化が、慢性腰痛の予防と改善に有効であることを解説。
